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2013年4月22日 (月)

森達也氏講演報告「ひつじの群れの中のヤギになろう」

 4月20日、森達也氏の講演は終了した。「排外主義を克服する羊の中のヤギ」と題した内容だったが、非常に考えさせられるものであり、勇気づけられた。

◇ひつじの群れの中のヤギ

 最初に「羊の群れの中のヤギ」と話の落ちを私はバラしてしまっているのだから困ったものだと反省しているが、話の確信はまさにこれである。

 数年前に森さんがモンゴルを訪れたとき、羊の群れの中に必ずヤギが含まれているを見つけ、不思議に思い聞いてみた。

 すると、「羊はバカだから・・・・」とすぐには意味の分からない答えが返ってきた。あとになって通訳ともいろいろ話し、ようやく納得がいったという。

 羊の群れ(群れ一般がそうだが)は集団でしか動かない。今いる場所の草を全部食べてしなっても、ここは食糧がすくなくなったからほかに移ろうと1匹、2匹の羊は移動しない。群れ全体でないと動かないので、そのままとどまっていると食糧が少なくなってやせ細ってしなう。

 ところが、群れの中にいるヤギは、新しい草地をもとめて移動し、それにつられて羊の群れも移動する。

「へんなヤギもいて、尖閣を買おうというヤギもいるし、あらぬところへ羊を導いてしまうヤギも、もちろんいる。ヤギになってしまえばいい。しかし、全員がヤギになる必要もない」

 まったくそのとおりだ。第二部の質疑応答と意見交換で参加者が、「在特会も一種のヤギかもしれない」という趣旨の発言もあった。で、ヤギになるとはどういうことか。

◇小さなつぶやきが社会を変える

「ほんとうにそうなの?これでいいんですか?と疑問をもったり立ち止まる一言」というようなことを森さんは言う。「多くの人がそのようにすれば必ず社会は変わる」と森さんは方向性を示し、別の角度からも指摘した。

「温度を急激に下げてマイナス10度くらいにしても、すぐに水が氷るわけではない。しかし、その水にちょっと刺激を与えたりすると急激に氷結する」

 わずかな刺激で全体が激変することのたとえであり、その「刺激」がいい方向へ社会を変えるか、逆の向きになるか両刃の剣だ。

 「刺激」は「つぶやき」でもある。

 つぶやきといえば、最近コリアンタウンで荒れ狂う在特会らの憎悪デモにたいし、文字通り「つぶやき」ツイートしたり、議員会館で批判の集会を開いたことで、排外主義を批判する人たちのカウンター行動が憎悪デモをはるかに上回り、少し空気が変わってきた。

 また、第二部で森さんも指摘したとおり、朝鮮学校の無償化からの排除に加えて最近東京都の町田市が、市内の小学校に入学する全児童に無償配布する防犯ブザーを朝鮮学校に通う子どもたちへ配らないと一度は決定した。

 ところがそれに対して町田市役所に多くの市民が電話をかけて抗議した。その結果、決定を撤回し、すべての児童へ配布をするとした。何人がそのような行動をしたのか、あるいは抗議の具体的な言葉を私は知らない。

 しかし「どうしてですか」「これはひどいのでは」というような電話内容だったのだろう。このような一種のつぶやきと小さな行動によって変わったことは大きい。

◇北朝鮮指導者を「将軍様」と訳す大マスコミ

 講演のはじめに、森さんは北朝鮮報道について述べた。昨年北朝鮮が「ミサイルを発射した」と日本のマスコミは大騒ぎし、けしからん、恐ろしい国だと扇動的なキャンペーンをはった。

「でも。英文ではロケットと書いてあり、人工衛星だったと確認されている。また、外国ではメディアによって伝え方が様々なのに、外務省がロケットをミサイルと翻訳し、日本のマスコミは何の疑問をもたずにそのまま一律報道している」

 言葉・単語は重要だ。もし正確に「人工衛星」とか「ロケット」と報道していたら受け取る側の反応はまったく違ったことだろう。

 もうひとつ、森さんは日本のテレビが、北朝鮮の人々が指導者を”将軍様”と呼んでいる映像と音声を流していることについても一言添えた。

「将軍様などといってると日本の人が認識すれば、とんでもない国だというイメージが伝わる。しかし、目上の人をよぶときは『さま』とつけるのは儒教文化が浸透しているからだ。

 先生様 なんとかさま、と儒教文化が徹底しているところでは目上の人に『様』をつける。でも、韓流ドラマの放映で、先生サマとか○×サマなどと翻訳したりアテレコをしたりしますか?」

 このように言葉の意味や背景を知る(あるいは知らせる)だけでも、世の中を一定方向に導きたい人々へのカウンターとなる。これを聞いて私が思ったのは、ものを見る位置を変えると見える景色が変わってくることだ。

 北朝鮮の挑発はエスカレートしているのは事実だが、ピョンヤンから見ると、目と鼻の先で世界最強のアメリカ軍と、自国と敵対している韓国軍が合同軍事演習を実施しているわけである。

 視点を変えれば、三浦半島沖で中国軍が大軍事演習を敢行しているようなものだ。そうなったら日本政府も大マスコミもヒステリックな対応をとることは間違いない。

 もちろん単純化して言っているのだが、そうやってものを見ていくと、ただ不安やイメージだけで見たり考えたりするのではなく、冷静な判断ができるだろう。

 森さんの話を聞いていて、マスコミが流す情報について「どうして?」「なぜ?」と考えるのを第一歩にして、「ロケットがどうしてミサイルになるの?」「目上の人にはサマをつけるのがハングル文化だけど・・」というようにつぶやいていくのが大切だと痛感させられた。

 講演の報告というかたちを借りて、いま私がこのブログ記事を書いていることも「つぶやき」であり、ヤギになる試みだと思う。(林 克明)

 

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